culture
テーマ「世界の子ども」
1984年以降、黒柳徹子さんのユニセフ親善大使としての海外渡航に毎回同行され、昨年93歳で永逝された田沼武能さん。子どもをテーマに多くの写真集を遺されました。本書は35年にわたる途上国訪問から生まれたベスト・ショットと心温まるエピソードを綴ったフォトエッセイです。
「子どもたちの前では涙を流しませんが、田沼さんの写真を見て泣くのです」と黒柳さんも序文で述べられている通り、田村さんがとらえた子どもたちの表情は印象的です。「希望を捨てず、おとなたちが起こした、ふりかかってくる人災にも負けずに生き抜いている。そんな真摯な子どもの姿に魅せられて私は写真を撮り続けている」と語られていた田沼さん。
報道写真界の重鎮として、1999年に当協会が実施した全国巡回写真展『20世紀の瞬間~紛争のない世界を子どもたちへ』や、ニューヨークの国連本部でも展示された2011年の『3・11 ユニセフ東日本大震災報告写真展』の開催にも尽力くださり、東北の被災地を案内した同僚には、「お世話になったから」とわざわざ写真を送ってくださるような気配りの方でもありました。田沼さん、ありがとうございました。
世界の辺境で、危険な道のりを経て学校に通う4人の子どもたちを追ったドキュメンタリーです。
ケニアのジャクソンは、獰猛な野生動物が暮らす草原を駆け抜け、15キロ離れた学校に通います。アルゼンチンのカルロスは、自分と妹の命を愛馬に託し、アンデス山脈の細く険しい崖道を通って18キロ先の学校をめざします。モロッコの少女ザヒラは荒涼としたアトラス山脈を友人とともに寄宿舎を目指して進み、インドのサミュエルは悪路と濁流が行く手を阻むなか、弟たちとともに車いすで通学します。
どんなに過酷でも彼らがあきらめないのは、実現したい夢があるから。パイロットになって世界の空を飛びたい、故郷に戻って獣医師になりたいなど、描く未来像はそれぞれですが、どの瞳も希望にあふれています。子どもたちにとって通学路とは、まさに夢への道のりなのです。
4人は道中さまざまな困難に遭遇しますが、他者へのやさしさを失うことなく、知恵とユーモアで乗り越えていきます。厳しいはずの通学路に時折響く子どもたちの笑い声。彼らの成長を見守るおとなたちの静かな祈り。その荘厳さに心打たれます。