vol.273 2022 spring

ユニセフ・インドネシア事務所
水と衛生専門官

小田切 光典

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©MitsunoriOdagiri

「東インドの島々」という意味をもつインドネシア。
その名の通り、東南アジア南部に位置する1万7千以上の島々からなる国です。人口は約2億7千万人と、世界第4位を誇ります。

1292年にマルコ ポーロがジャワ島を訪れ、1602年にはオランダが東インド会社を設立して香料とコーヒーの輸出を独占。以来、オランダの統治は約300年、第2次世界大戦が始まるまで続きました。1949年、インドネシア共和国として独立。近年は目覚ましい経済発展を遂げていますが、上下水道の整備が遅れ、衛生環境の悪化が子どもたちに大きな影響を与えています。そんなインドネシアで日々、子どもたちのため邁進する小田切の1日をご紹介します。

インドネシア基礎データ

面積
約192万平方キロメートル(日本の約5倍)
人口
約2.70億人(2020年、インドネシア政府統計)
5歳未満児死亡率
25/1000出生あたり(2018年)
最低限の基礎的衛生設備(トイレ)サービス
[家庭]73%(2017年)[学校]34%(2016年)

技術を超えた課題

私はもともと環境問題に興味があり、大学で環境工学を学ぶなかで、世界では、安全な水と衛生施設があれば防ぐことのできるはずの病によって、多くの命が失われていることを知りました。

留学先の大学院では、インド農村部に約1年間滞在し、飲料水や手指の糞便汚染経路について研究中に、政府の事業を通じトイレを導入したにも関わらず地域住民に使われず、結果、糞便汚染のレベルも減らないといった事実を目の当たりにし、技術だけでは解決できない問題であることを痛感しました。

これらの経験を通じ、政府の政策レベルから地域住民の行動変容を促す事業まで、幅広く支援を行うユニセフに興味を持ち、2015年からユニセフ・インドネシア事務所にて水と衛生の仕事をさせていただいております。

屋外があたりまえ

2020年、インドネシアは中所得国の仲間入りをしましたが、いまだ約1500万人の人々が屋外排泄を行っており、安全な飲み水を得にくい現状があります。2019年には11万5千人の5歳未満児が亡くなっており、主な死亡原因のひとつは下痢症です。

このような背景からユニセフは、ジャカルタにある国事務所と地方に複数ある地域事務所を通じ、政府の取り組みを支援しています。ユニセフの水と衛生の事業というと、井戸を掘ったり、トイレを建設したりというイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、私の仕事は、政府が各種事業を調査・監視する能力の強化と、ユニセフが各地で実施している事業の評価・分析を通じて政府に向けて政策提言を行い、持続可能な開発目標(SDGs)の達成を支援するといった内容です。

今後も継続して調査・監視・評価・分析を行い、より効果的な事業のプログラム設計や、政府や行政の政策支援を通じ、一人でも多くの子どもたちが安全な水と衛生設備を利用できるよう、支援活動を行っていきます。

小田切光典
ユニセフ・インドネシア事務所水と衛生専門官のある一日

(新型コロナウイルス感染拡大を受け、インドネシアでは週の半分はテレワークです)

©MitsunoriOdagiri

私の“お仕事ご飯”

家族も大好き!

オフィス近くのインドネシアレストランにてソト・アヤムと白米。ソト・アヤムは様々なスパイスを使用した鶏肉スープで、家族も私も大好きなインドネシア料理の一つ。

Profile

おだぎり・みつのり

東京都出身。北海道大学・環境工学修士取得後、ゼネコン勤務を経て、カリフォルニア大学デービス校にて土木・環境工学Ph.D取得。博士課程在籍中にインド農村部にて研究、ユニセフ・ベトナム事務所でインターン。2015年にJPO(※)としてユニセフ・インドネシア事務所(水と衛生担当官)に赴任し、2018年より現職。

※JPO:ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(Junior Professional Officer)は、国際機関と各国政府の取り決めに基づき、一定期間、各国から国際機関に派遣される非正規の専門職員