vol.273 2022 spring

すべての子どもに必要だと思うことは、
「愛情をこめた人の
やさしい慈しみ」です。

オードリー・
ヘップバーン
(プロフィールはこちら)

女優・ユニセフ親善大使

各界で活躍されている方に「子ども時代」を振り返っていただきな がら、世界中のすべての子ども、一人ひとりの子どもたちにとって必 要なことは何かを考えていく連載企画「for every child,_」。第20回は、女優でユニセフ親善大使だったオードリー・ヘップバーン。『ローマの休日』をはじめ数々のハリウッド映画の名作で輝きを放ち、2022年5月には新たなドキュメンタリー映画の公開が予定されるなど、今なお世代を超えて多くの人々から愛されています。晩年はユニセフの親善大使として、世界十数カ国をめぐり、子どもたちの声なき声を世界へ伝え続けたオードリーからの愛にあふれたメッセージです。

「私は、ユニセフの活動に決して揺らぐことのない感謝と信頼を寄せています。なぜって、私自身が第二次世界大戦直後のオランダで食べ物や医療の支援を受けた子どもの一人だったのですから」1989年の親善大使就任インタビューでオードリーは答えました。

「終戦後、ユニセフはすぐに私たちのもとに来て、あらゆる緊急事態に対応している今と同じように、食べ物、衣類、薬、毛布などを届けてくれました。世界のどこであろうと、もっとも必要としている子どもたちに支援を届ける力をユニセフは持っています。私にできることはわずかですが、ユニセフの活動に貢献することはできます。

女優としてのキャリアが何か特別なものを私に残してくれたとすれば、それは、人々が今も関心を寄せてくれるこの≪声≫を、子どもたちのために使えることです。これ以上に素敵なことなんてありませんよね」

ユニセフが支援する食糧供給所で、重度の栄養不良の赤ちゃんを抱きかかえるオードリー・ヘップバーン(1992年ソマリア)
© UNICEF/UNI29049/Press

オードリーはユニセフ親善大使として、食料危機に苦しんでいたエチオピアをはじめ、グアテマラ、ベトナムなど、世界十数カ国のユニセフの支援現場を訪問しました。なかでも、当時まだ状況が世界に知られていなかった、世界最悪とも言われる飢餓と内戦に苦しんでいたソマリアでは、子どもたちが置かれた現実に、大きな衝撃を受けたと語っています。彼女が訪問後に発したその≪声≫に、多くの支援が世界中から集まりました。

そしてこのソマリアが、最後の訪問地になりました。亡くなる一カ月前のクリスマスイブ─、スイスの自宅で愛に包まれた親密な雰囲気のなか、彼女が家族に朗読した詩があります。サム・レヴェンソンという作家が孫娘の誕生日に贈ったもので、オードリーはこの詩をこよなく愛しました。下記はその一部です。

魅力的な唇になるために、やさしい言葉を話しなさい。
愛らしい目を持つために、人のよいところを探しなさい。
おなかをすかせた人に食べ物を分けてあげれば、
身体はほっそりするよ。
1日1 回子どもが指で梳いてくれれば、髪はつややかになる。
決してひとりで歩いてはいないことを知っていれば、
弾んだ足取りで歩けるはず。
おまえの未来のために伝統を残しておこう。
愛情をこめた人のやさしい慈しみは、けっして失われることがない。
物は壊れたらおしまいだけど、人は転んでも立ち上がり、
失敗してもやり直し、生まれ変わり、
前を向いて何回でも何回でも何回でもあらたに始めることができる。
どんな人も拒絶してはいけないよ。
助けがほしいとき、
必ず誰かが手を差し伸べてくれることを覚えておきなさい。
大きくなればきっと自分にもふたつの手があることを発見するだろう。
ひとつの手は自分を支えるため。もうひとつの手は誰かを助けるため。
おまえの「すばらしき日々」はこれから始まる。
どうかたくさんのすばらしき日々を味わえるように。

引用:『AUDREY HEPBURN 母、オードリーのこと』ショーン・ヘップバーン・フェラー 著 / 実川元子 訳 竹書房
ベトナム北部で山岳民族の伝統的な衣装を身に着けて歩くオードリー(1990年)
© UNICEF/UNI52701/Charlesv
ソマリアの給食センターで重度の栄養失調の子どもを抱く(1992年)
© UNICEF/UNI52409/Press
ケニアのソマリア人居住地で好奇心いっぱいの子どもたちに囲まれて(1992年)
© UNICEF/UNI52404/Press

Profile

Audrey Hepburn

ベルギー生まれ。ハリウッド黄金期を代表する女優のひとり。代表作にアカデミー主演女優賞を受賞した『ローマの休日』(1953)。他『麗しのサブリナ』『ティファニーで朝食を』など。1988年から1992年にかけて親善大使としてアフリカ、南米、アジアの子どもたちへの支援活動に献身。1992年には米国で文民への最高勲章である大統領自由勲章を授与された。その1カ月後の1993年、スイスの自宅で死去。享年63歳。

オードリー・ヘプバーンの驚くべき人生とキャリアを描いた初のドキュメンタリー映画
『オードリー・ヘプバーン』が2022年5月6日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマほかにて全国ロードショー
配給:東北新社
audrey-ciema.com

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※本文は「オードリー・ヘップバーン」、映画情報は邦題の通り「オードリー・ヘプバーン」と表記いたします。