vol.273 2022 spring

culture

テーマ「つなぐ」

『火星に住むつもりです~二酸化炭素が地球を救う~』
村木風海 作
光文社

book『火星に住むつもりです
~二酸化炭素が地球を救う~』

小学4年生のとき、祖父に贈られたS・ホーキング博士の冒険小説をきっかけに火星移住を決意した少年は、火星の大気の95%を覆う二酸化炭素を回収すべく研究を積み重ね、二酸化炭素回収装置「ひやっしー」を発明します─とこれは、正真正銘のノンフィクション。

本書にあふれる「目からウロコ」の1つは、地球温暖化が叫ばれて以来「人類の敵」とみなされてきた二酸化炭素を、作者が「可能性の塊」ととらえていること。自らの研究が地球温暖化問題まで解決する可能性があると知るや、回収した二酸化炭素から燃料を生産する「そらりん」の開発にも着手します。

2つ目は、どんなに厚い壁が立ちはだかっても、彼が常にワクワクしながらそれを乗り越えていくこと。楽しさの工夫を凝らしながら、彼は夢に向かってつき進みます。

3つ目にして最大の驚きは、化学者・発明家・冒険家・社会起業家と多様な肩書をもつ彼が、「Z世代」と呼ばれる2000年生まれの現役大学生だということ。ほんの少し前まで「少年」であった風海青年は、人類の未来に向けて明るい希望をつないでくれます。


『地球が壊れる前に』
Before the Flood(アメリカ/2016年)
amazon prime video、U-NEXT 等で配信中

movie『地球が壊れる前に』

ロサンゼルスで生まれ、10代でハリウッドデビューを果たした少年は、20代前半で聞いた「地球温暖化」話に衝撃を受けます。バトンを受けとったのはレオナルド・ディカプリオ。手渡したのは、当時副大統領だったアル・ゴア。

そのときゴアが描いた「地球の周りをぐるりと取り囲んだ線」の真の意味を知るべく、ディカプリオは30代で旅に出ます。石油採掘のため伐採され荒廃した自国の「かつての森」の空中視察に始まり、氷が恐ろしい音を立てて融解する北極圏から、サンゴ礁が死滅し魚も消えた海の中まで─「架空の世界」をとび出した俳優が「現実の世界」で目にしたのは、幼いころに畏敬の念をもって見上げていた、人間の欲のために地獄と化していくエデンの園を描いたH・ボス(※)の絵の世界でした。

「今の自分にできることは何か」実践を重ね、40歳でピース・メッセンジャーとして国連の演壇に立つディカプリオの姿が映し出されます。成長した元天才子役を導き手に、あらためて「母なる地球」への感謝の念がこみ上げるとともに、私たち一人ひとりに何ができるかを問いかけてくる作品です。

※Hieronymus Bosch (1450頃-1516)ルネサンス期に活躍した宗教画を得意とするネーデルラントの画家