vol.273 2022 spring

太陽光発電

[020] 太陽光発電

太陽電池を用いて太陽光を直接的に電力に変換する発電方式。ユニセフは、様々な分野で太陽光発電を子どもたちの支援に活用している。

「脱炭素化」の取り組み

2030年まで10年を切った今、世界のほぼすべての子どもたちが、洪水や水不足、熱波などなにかしらの気候危機に直面しています。気候変動の原因となる温室効果ガスを大量に排出しているのはほとんどが先進国ですが、被害を最も深刻な形で受けているのは途上国の子どもたちです。

温室効果ガスを減らす「脱炭素化」の取り組みとして、再生可能エネルギーが注目されています。ユニセフは保健や水と衛生の分野で、太陽光発電を子どもたちへの支援に活用しています。アフリカ南東部マラウイでの取り組みをご紹介します。

慢性的な電力不足

電力にアクセスできるのは、国民のわずか約10%。マラウイでは送電線の設備が整わず、都市部に比べ、人口の8割が住む農村部には電力をほとんど届けられていません。

この国の主な電力源は、国土の20%に及ぶ広大な湖を活用した水力発電ですが、雨季と乾季の水量差が激しく、雨量自体も近年減少しているため、湖の水位が下がり続けています。不安定な電力供給は、人々の日常はもちろん、人口の半分以上を占める子どもたちの命をつなぐ保健サービスや安全な水の確保の障がいになっています。

①ソーラー式冷蔵庫

そこでユニセフが取り組んでいることのひとつが、太陽光(ソーラー)発電を医療施設のワクチン保管用の冷蔵庫に利用すること。
ワクチン保管に欠かせない温度管理を可能にする「ソーラー式冷蔵庫」は、2018年にアフリカ全域で導入が開始されました。マラウイでは2020年末までに429基が病院や保健センターに設置され、約100万人の母子向け予防接種などに貢献しました。
新型コロナウイルス感染症用も含む様々なワクチンの保管に必要な電力の75%は、太陽光発電でまかなうことができると推定されています。アフリカに降り注ぐ「太陽の力」が子どもたちの命をつないでいます。

写真中央に見えるのが、太陽光で発電を行うためのソーラーパネル
© UNICEF/UN0516086/Chagara
太陽光発電によってワクチンを最適な温度で保管できるソーラー式冷蔵庫
©UNICEF/UN0318379/Ramasomana
予防接種を受けるマラウイの子ども
© UNICEF/UN0457920/Mvula

②ソーラー式ポンプ

電力不足に加え、マラウイでは安全な水の確保も大きな課題です。都市と地方の格差が大きく、都市部で約80%に達する水道の普及率が、地方ではわずか9・6%に留まります。水道がなければ、井戸から水を汲み上げ、井戸がなければ川や池に汲みに行くなど、数十リットルもの水を汲んで運ぶ時間と労力は甚大です。また、その役割を担うのは多くの場合、女性や子どもたちです。

こうした状況を改善するため、ユニセフは、地下水を効率的に汲み上げ広範囲に届けられる太陽光発電付きの給水設備「ソーラー式ポンプ」の導入を進めています。ソーラーパネルで集めた電力を使って地下水を汲み上げ、水道管を通して学校やコミュニティに水を届ける仕組みです。

現在マラウイでは45基が稼働中。維持費用を比較した結果、従来のディーゼル発電機を利用したポンプより低コストであることが分かりました。初期費用はかかるものの、設備寿命である25年のスパンでみると、燃料も必要ないソーラー式は、ディーゼル式の3分の1の維持費用で済みます。

また、2019年に大型サイクロン・イダイがマラウイを襲った際は、避難生活を送っていた13の地域にソーラー式ポンプを設置し、約6万人に安全な水を供給しました。

持続可能な電力

ユニセフは、持続可能な方法で子どもたちを支えるための取り組みを進めています。2020年は世界41カ国に1448基のソーラー式ポンプを設置しました。今後もマラウイをはじめとする国々での経験を蓄積しながら、支援のなかで太陽光発電の活用を進めていきます。

ユニセフによる太陽光発電の活用

学校が変わった!

「学校がとても綺麗になりました。トイレは1日に3回、床は毎日掃除されています」と15歳のミリくん。これまで下痢で学校を休む日が多くありましたが、今では学校に設置されたソーラー式ポンプのおかげで、安心して水を飲んだり、手を洗うことができます。
女の子たちにとって学校に水がないことは、一層深刻な問題でした。ゲトゥルードさん(15歳)は生理の間、学校に来ることができなかったと言います。「毎月、学校を休まなくてはなりませんでした。ソーラー式ポンプは、その全てを変えてくれました」。今は清潔なトイレと教室がある学校に行くことを楽しみにしているそうです。

ソーラー式ポンプが設置されたチクワワ村の子どもたち
©UNICEF/UN0486129/Chagara