世界で働く 日本人職員
©Yoshito Kawakatsu
アフリカ西部、大西洋に面したガーナ共和国。赤道直下で一年中高温多湿な国です。ガーナといえば、野口英世博士とチョコレート。現地で黄熱病研究をしていた博士は、黄熱病に罹り、1928年に首都アクラで51歳で亡くなりました。また、カカオの生産は世界第2位を誇ります。1957年イギリスから独立。公用語は英語です。
現在も衛生水準は低く、死亡原因の約30.5%が感染症。医療従事者数も不足しており、人口あたりの医師数は日本の23分の1程度です。そんなガーナで、高い専門性を活かして子どもたちのために奮闘する川勝の一日をご紹介します。
これまで私はJICAの専門官としてケニアやナイジェリアで母子保健や保健システム強化のプロジェクトに従事してきました。また米国のワシントン大学では、データ分析やインパクト評価(*1)に関する見識を深めました。こうした経験を踏まえ、国レベルのデータや根拠に基づいた政策戦略の立案をサポートしたいと考え、JPO(*2)プログラムを通して2020年からユニセフ・ガーナ事務所で保健・栄養担当官として勤務を開始しました。
*1…事業が対象社会にもたらした変化(インパクト)を精緻に測定する評価手法
*2…JPO:ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(Junior Professional Officer)は、国際機関と各国政府の取り決めに基づき、一定期間、各国が専門家を国際機関に派遣する制度。
着任後すぐ、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行が始まりました。ガーナ事務所では、日本はじめ各国からお預かりした資金を用い、空港での水際対策、感染予防の啓発キャンペーン、PCR検査体制の強化、医療スタッフ用感染予防キットの配布など、多岐に渡る活動を行うことができました。また、国内約9000の病院や保健施設からの情報を分析することで、追加支援が必要な場所を特定して届けることができました。
ガーナでは、新生児治療を行う設備が整っていない地域がたくさんあります。昨年、ガーナ保健省と協力して、全国的な現状調査を行い、人口動態や疾病状況、地理情報などを総合的に考慮した分析結果を基に、より優先度の高い地域から新生児治療に関する支援に取り組むようになりました。
状況に合わせた柔軟な支援を迅速に行えるのが、ユニセフの強みです。支援した病院から喜びのメッセージをもらったり、「おかげで命の危機にあった新生児を救うことができた」という報告を聞いたりするたびに、たいへん嬉しく、やりがいを感じます。
ほかにも、母子手帳の全国展開、電子カルテの導入、地域保健システム強化など活動は多岐に渡ります。目まぐるしく変わる状況に圧倒されることもありますが、ガーナの変革が進んでいるのを間近で感じることができ、この国の将来が非常に楽しみです。
たっぷり補給!
オフィスで買えるランチボックス。ボリュームが多く、ほぼ二食分。小腹が減ったら近所で売ってるピーナッツを!
※データは主に外務省 HP、『世界子供白書 2019』による。
※地図は参考のために記載したもので、国境の法的地位について何らかの立場を示すものではありません。
京都府出身。神戸学院大学総合リハビリテーション学部卒業。長崎大学国際健康開発研究科(現熱帯医学・グローバルヘルス研究科)で公衆衛生修士号を取得。現在、米国ワシントン大学公衆衛生大学院グローバルヘルス学部の博士論文提出資格者。JICAの保健専門家としてケニア、ナイジェリアにて勤務。ビル&メリンダ・ゲイツ財団でのコンサルタント経験などを経て、2020年よりガーナ事務所。2022年4月、ユニセフ ニューヨーク本部 統計・モニタリング部門に転勤。