vol.274 2022 summer

すべての子どもに必要だと思うことは、
「心でサポートしてくれる仲間」です。

星出彰彦 (プロフィールはこちら)

JAXA宇宙飛行士

各界で活躍されている方に「子ども時代」を振り返っていただきながら、世界中のすべての子ども、一人ひとりの子どもたちにとって必要なことは何かを考えていく連載企画「for every child,_」。第21回は、宇宙飛行士の星出彰彦さん。4歳の頃から宇宙へ行くことを夢見て、3度目の挑戦で宇宙飛行士となった星出さん。2008年に6人目の日本人宇宙飛行士として初めて宇宙へ行き、約35年来の夢を叶えました。昨年は、約6ヶ月の宇宙長期滞在でISS(国際宇宙ステーション)の船長を務め、次は月に行きたいと語る星出さんからの夢と希望を与えてくれるメッセージです。

宇宙に行きたいと初めて思ったのは、子どもの頃。ワシントンD.C.にあるスミソニアン国立航空宇宙博物館で宇宙服などの展示を見たりケネディー宇宙センターでロケットの現物を見る機会に恵まれ、時代的にもSF映画やアニメが流行っていたので、かっこいいな、宇宙に行ってみたいな、と、単純な憧れがありました。

子どもの頃の私は至って普通で、スポーツや勉強で何か秀でたものがあったわけでもなく、ごく一般的な子どもでした。7歳までアメリカに住んでいたので、帰国して友達と話がうまくかみ合わなかったこともありました。

日本の中学から寮生活をして、高校2年間もシンガポールの学校に留学して様々な国の人たちと寮で過ごしました。そこで出会った友人や恩師は、とても大切な財産になっています。寮生活は一気に200人くらい兄弟ができた感じで、考え方や文化が異なる仲間たちと共に生活し活動するという経験ができたことは非常に大きかったです。それは今の宇宙飛行士としての活動にすごく活かされていると思います。

高校で留学を決めたのは、日本人初の3人の宇宙飛行士が選ばれ、職業として意識し始めた時で、宇宙飛行士に必要なものは国際感覚や英語力だろうと考えての行動でした。留学中、人格形成において文化や歴史は大いに影響しているけれど、国籍は関係なく、その人それぞれのキャラクターがあると気がつきました。今の仕事でも、皆それぞれ国を代表して参加していますが、それ以前に一人の人間として付き合い、お互いをリスペクトすることで、話し合いや助け合いができます。宇宙飛行士は一人の力で宇宙に行くわけではなく、いろいろな国から参加している大きなチームの一員として活動しています。仲間がいるからこそ、安心して自分たちの役割を果たすことができるのです。

私は3度目の挑戦でようやく宇宙飛行士に選ばれましたが、私自身、精神力が人並み以上に強いというわけではありません。諦めなかったのは、宇宙に行きたいという強い想いと、仲間の存在があったから。そして、挫折や失敗から色々学んでここまできました。 国際宇宙ステーションができて20年、我々は一般の方がもっと宇宙に行くための取っ掛かりを作ったので、今の子どもたちにはそれを引き継ぎ、より遠くの宇宙に行ってもらいたいです。

夢の原点となった米国のスミソニアン国立航空宇宙博物館にて、中学3年生時(1983年)
(写真:JAXA提供)

Profile

ほしであきひこ

1968年、東京生まれ。1992年、宇宙開発事業団(現JAXA)に入社し、H-Ⅱロケットなどの開発・監督業務に従事。1999年、ISS(国際宇宙ステーション)に搭乗する日本人宇宙飛行士の候補者として選抜される。2008年6月、スペースシャトル「ディスカバリー号」に搭乗し、初めて宇宙へ。2012年7月、ソユーズ宇宙船に搭乗、ISS長期滞在を実施。2021年4月、クルードラゴン運用2号機に搭乗、第65次長期滞在にてISS船長を務めた。