vol.281 2024 spring

ユニセフ・ブラジル事務所
保健専門官

若林真美

(プロフィールはこちら

© Mami Wakabayashi

世界で5番目の国土面積を誇り、7番目に人口が多い国。ブラジルは、上位中所得国ですが、所得格差が大きく、特に北部と北東部では、多くの子どもたちが深刻な貧困のなかで暮らしています。

広い国土の地域ごとにある特有の問題に対応するため、ユニセフは首都ブラジリアのほか8つの都市に地域事務所を構え、活動しています。
子どもの命と健康を守るのに効果的な予防接種も、貧困地域ほど接種率が低い状況です。

そんなブラジルで、一人でも多くの子どもを予防可能な病気から守るため、日夜懸命に奮闘する若林の一日をご紹介します。

ブラジル基礎データ

面積
851.2万平方キロメートル(日本の約22.5倍弱)
人口
約2億1,531万人(2022年:国連)
5歳未満児死亡率
14/1000出生あたり(2021年)

予防接種率を上げる

ブラジルは上位中所得国に分類され、国際機関からの支援も卒業した国ですが、経済格差を背景とした社会課題が多いため、ユニセフ・ブラジル事務所は、企業や財団、個人からの寄付によって支援活動をしています。

私は、ブラジル事務所で、主にふたつの仕事を担っています。ひとつは「予防接種率向上プロジェクト」に関する提案書や報告書などの作成。ブラジルの予防接種率は元々90%以上ありましたが、2015年から下がりはじめ、2021年に68%まで低下する事態となったため、改善プロジェクトが立ち上がりました。

参加する1521の自治体は、ブラジルでも特に脆弱なアマゾン地域を含む北部・北東部にあります。プロジェクトの進捗をモニタリングし、さらなる支援の必要性を訴える報告書や提案書は、きびしい環境に取り残されてしまう子どもたちを継続的に支援するためにも重要です。

予防接種率向上のため
2015年以降の政権交代などの影響により下がってしまったワクチン接種率を向上させるための活動(BAV)を支援*
©UNICEF/ BRZ/Erico Hiller
幼児期の早期発達ケア
保健・教育・福祉が一体となって0歳から6歳までの早期発達ケアの質向上のための活動を展開
©UNICEF/BRZ/Manuela

*本号特集でも若林保健専門官がBAVの詳細を語っています。ぜひご覧ください

日本との連携

もうひとつは、ブラジルにおける日本に関連した団体や企業との官民連携の強化です。ブラジルが初議長国となる2024年のG20、ブラジルで初開催となる2025年のCOP30に向けて、気候変動などをテーマにした官民連携をより強化したいとユニセフは考えています。私もこれまでの経験を生かしながら、在ブラジル日本大使館、JICA、ブラジル日本商工会議所、日系移民による企業団体などに活動を知っていただくため、官民連携に関するセミナーなどを企画中です。

ユニセフは、私が専門とする保健分野を超え、分野横断的な仕事を求められる職場です。非常にチャレンジングではありますが、常に他の分野から学ぶことが多くあります。また、健康・医療分野はブラジルでも成長産業なので、今後、グローバルな視野で課題解決に向けて取り組む企業との連携も活発化してくると考え、その在り方を模索しているところです。

大規模干ばつ
女優でユニセフ・ブラジル親善大使のタイナラさんがアマゾン州の干ばつ被災地を訪れた。川は過去最低水位を記録し、山火事による大気汚染が深刻化した
©UNICEF/Communication team
毎月の誕生日会
毎月末頃に、その月の誕生日の同僚をお祝いします。部署の垣根を超え、活発な交流が行われ、新しい仲間を知る機会にもなります
©Mami Wakabayashi

若林真美
保健専門官のある一日

私の“お仕事ご飯”

©Mami Wakabayashi

ブラジルの超定番「ポルキロ」

ブラジルで定番ランチといえば、ビュッフェスタイルの量り売りです。事務所周辺に多くの「ポルキロ」スタイルのレストランがあります。ブラジルらしく、お肉「シュラスコ」は専任シェフが焼いてくれます。

※データは主に外務省HP、『世界子供白書2021』による
※地図は参考のために記載したもので、国境の法的地位について何らかの立場を示すものではありません

Profile

わかばやし・まみ

大阪府出身。大阪大学保健学(看護)を卒業後、大阪大学大学院医学系研究科で修士(医科学)、博士(医学)を取得。コンサルタント企業、名古屋大学、外務省、国立国際医療研究センター(iGHP)にて、保健システム強化等に取り組む。2023年8月より、外務省支援のグローバルヘルス・ボランティア・イニシアチブにより現職。