カトマンズの中学校を会場におこなわれた腸チフスワクチンの接種を受けたばかりの女の子。腸チフスは、日本国内での発症はまれですが、南アジアなどで多くの感染がみられます。ユニセフやWHO(世界保健機関)などの支援を受けてネパール政府が開始したキャンペーンの一環で、生後15カ月から15歳までの子どもたちに予防接種がおこなわれました。
© UNICEF/UN0626297/Upadhayay
巻頭言
今から50年前の1974年。第二次世界大戦直後から続けられていた国際的な天然痘根絶の取り組みの成果(*)から、世界のすべての子どもたちがワクチンを公平に利用できるようにするための国際的な取り組み「予防接種拡大計画(EPI)」がスタートしました。
途上国の多くで子ども10人中1人が生後1年以内に命を落としていた当時、ユニセフは、経口補水療法や母乳育児、女子教育、家族計画の普及などとともに、もっとも安全で費用対効果が高い子どもの命を守る施策として、WHOと協働しEPIを推進。1974年の計画開始時は5%以下だった世界の子どもの予防接種率は、1990年代初頭までに80%に達しました。約50年が経った2021年、世界の乳児死亡率は1000人あたり100人から28人にまで改善されています。
EPIの功績は、子どもの死亡率の削減に留まりません。生産から接種まで一定の温度で保冷しなければならないワクチンを、ときに極端な気温条件のなか、電気はおろか道路さえ整備されていない地域にも届ける「コールドチェーン」と呼ばれる強固なワクチン物流網の確立と拡充も進められました。当初は乳幼児用の6種類だったワクチンの数も、ヒブ感染症や肺炎球菌感染症、ロタウイルス、HPV、A型髄膜炎、日本脳炎、そして新型コロナウイルスワクチンなど13種類に増えました。また、予防接種の実施や事業のモニタリングに携わる人材の育成、予防接種の知識を普及するための社会に向けた啓発活動なども推進しました。このようにこの50年間で、現在も世界中でおこなわれている、さまざまな基礎的保健事業の礎を築いたのが、ユニセフが推進したEPIです。
本号では、長年にわたってユニセフを象徴する活動のひとつもなっている「予防接種」をテーマに、皆さまの長年のご協力の成果と今後の課題をご紹介します。
*1980年にはWHOが根絶を宣言
続きを読む
2024.4.1
お知らせ
2024.4.1
お知らせ
2024.4.1
お知らせ
2024.4.1
お知らせ
2024.4.1
お知らせ
編集後記
読む
本号の特集テーマが決まり、「何か素材はないか?」と図書館に向かいました。
手にしたのは、「コールドチェーン」の検索で見つけた翻訳本。最初の数ページこそ、評判どおり「ワクワク」「スラスラ」読めましたが、書籍の大半を占める「熱」や「暑さ」の原理や制御に格闘した19世紀の賢人たちの物語は、「原子」「元素」「素子」など、典型的な昭和の文科系には難解な言葉の連続にことごとく阻まれ……。
30年前、ユニセフの先輩に「これからの時代の主役」とミャンマーの山奥で見せてもらった太陽光発電式ワクチン冷蔵庫の隣には、70年代から使われていた古びたケロシン(灯油)燃焼式の冷蔵庫がありました。
「ワクチンを冷やすために、火をつける?!」。恥ずかしながら、その仕組みはいまだに理解できていません。
© UNICEF/UN0626297/Upadhayay、© UNICEF/UNI98143/Gray、© UNICEF/UN0595082/Panjwani、© UNICEF/UN0669695/SEE CREDIT NOTE、© Mami Wakabayashi、講談社、©岡山県ユニセフ協会、©UNICEF/UNI501984/Al-Qattaa