vol.282 2024 summer

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特集

地球は子孫から借りているもの

気候変動と子どもたち

巻頭言

「拡大再生産」させない

日本ユニセフ協会には、多いときには日に数本のプレスリリースがニューヨークのユニセフ本部から届きます。翻訳し、日本の報道関係の皆さまにお送りした数は、昨年1年間で230本にのぼりました。

COP28期間中、ユニセフは、若者と各国代表が気候変動対策を議論する会議を開催(アラブ首長国連邦、2023年12月8日)
© UNICEF/UNI486518/Maged Helal

拡大から2年目を迎えたウクライナ危機。10月に危機が深刻化したガザ。内戦下のスーダン。ミャンマー、ロヒンギャの人道危機。中米の「ダリエン地峡」に代表される難民・移民問題。ネパールやアフガニスタンの地震。干ばつや洪水、サイクロン等の自然災害――。新聞、テレビ、ラジオ、インターネットのニュースになったものはごくひと握りですが、当協会のホームページに並ぶ「見出し」は、ユニセフのスタッフが世界のあらゆる場所で日々、さまざまな難題に取り組んでいる姿を伝えます。

昨年12月7日に配信した「気候変動の定義、若者の半数のみ正解」は、前月30日から、中東の都市ドバイで開催された第28回気候変動枠組条約締約国会議(COP28)の期間中、発信されたプレスリリースのひとつ。残念ながら本件の報道も限られましたが、その影響をもっとも受ける子どもたちが気候変動とはなにかを理解しないまま、事態が深刻化しているという事実は、水源の枯渇や食料危機など、長年ユニセフが発信してきたメッセージとは少し違う切り口で「気候変動は子どもの権利の危機」を訴えました。

「(若者は)街頭や会議室で気候変動対策を訴えてきました。(中略)世界のリーダーたちは、子どもや若者がこの問題に関する教育を受け、議論に参加し、今後何十年にもわたって彼らの人生を左右する決定に関与することができるよう、約束しなければなりません」。ユニセフのラッセル事務局長は、プレスリリースにこんなメッセージを寄せています。

負の遺産を引き継がせない。拡大再生産もさせない。2022年春号に続き「気候変動」を特集する本号では、ユニセフが昨年11月にまとめた気候変動・環境問題に関する最新の戦略計画を軸に、世界各地の取り組みや課題を紹介します。

特集

地球は子孫から借りているもの

気候変動と子どもたち

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今、同じ空の下で

ナイジェリア、2023年撮影

編集後記

千思万考

「……人間は核を制御できていなかった。それが『真実』である。ただし、これは『10年目の真実』だろう。この後、廃炉作業の中で新たな事実が浮かび上がった時、これまでの事故像が一転して変わるかも知れない」NHKメルトダウン取材班『福島第一原発事故の「真実」』(講談社、2021年)。

何が真実か? 気候変動をめぐる議論でも目にする言葉ですが、この文には次の言葉が続きます。

「新たな事実や知見(中略)の一つ一つを丹念に検証すれば、(中略)未来につながる普遍的な教訓が浮かび上がってくるはずである」(前掲書)。

私たちの世代では克服できそうにない気候変動問題も同様、次の世代を担う方々にも、引き続き知見を積み重ねていただかなければ。

少し不便になっても負の遺産を減らす。ちょっと負担が増えても次世代に投資する。電気も石油も大量消費が当たり前の時代を謳歌した世代。その責任は逃れられません。

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