世界で働く
日本人職員
© UNICEF Lesotho/ 2024
レソト王国は世界で唯一、国土のすべてが標高1000m以上の高地にある、南アフリカ共和国に囲まれた小さな内陸国です。
首都マセルは標高約1800mに位置し、3000m級の山々が広がる東部では冬季に降雪があり、スキーも楽しめます。
人口の9割以上はソト族で公用語は英語とソト語。近年の気候変動による影響を大きく受けており、干ばつや洪水による慢性的な食料不足に直面しています。
主産業は繊維産業、農業、建設業ですが、経済的には南アフリカに大きく依存しています。
そんな“天空の王国”レソトで保健活動を推進する、看護師の経歴を持つ大西の一日をお伝えします。
レソトは低中所得国で経済状況は悪化傾向にあるものの、国内情勢は比較的安定しています。ただ、干ばつや洪水を引き起こす気候危機は差し迫った脅威で、食料不足から栄養不良に陥る子どもが増加しています。
また、保健分野では妊産婦や新生児の死亡率が高く、2020年の妊産婦死亡率は世界平均の倍以上、新生児死亡率は東部・南部アフリカで3番目の高さです。90%以上の妊婦が出産前ケアを1回以上受け、87%が保健医療従事者の付き添いのもとで出産しているにもかかわらず、保健サービスの質が十分ではないために死亡率が高くなっているのです。
こうした保健医療サービスの質を上げるのが私の仕事です。政策は保健情報システムのデータに基づいて決定されるべきであり、その質が子どもとその家族への保健サービスの質に直結します。どの家庭でいつ子どもが生まれるか、健康・発達状態は良好か、ワクチン接種状況はどうかなどを保健センターや自治体が正確に把握し、必要なサービスを適時に提供できるよう、システムのデジタル化やモニタリング機能を強化し、政策策定やそのためのシステム構築を日々支援しています。
私は高校生の頃から、子どもの保健分野に関わる国際協力の道に進みたいと思い、日本の大学の看護科に進学して看護師と保健師の資格を取得しました。卒業後は小児科の看護師として6年間働き、その後、青年海外協力隊、英国の大学院、NGO勤務を経てユニセフ職員になりました。
直接患者さんと接する仕事もやりがいを感じましたが、政策や制度を改善し、より多くの子どもたちの健康や生活の改善に貢献したいと思うようになりました。それができるのが、国連機関であるユニセフです。私にとってデータや報告書は、無機質な数字や文字ではなく、改善された子どもたちの様子を背後に感じられる、大きな意味のあるものなのです。
木曜日はレソト料理!
国連ハウスの食堂の日替わりランチ。毎週木曜日はレソト料理の日。主食はトウモロコシの粉を練ったパパ、羊のホルモン煮込み、ほうれん草とバターナッツの副菜です。
※データは主に外務省HP、『世界子供白書2021』による
※地図は参考のために記載したもので、国境の法的地位について何らかの立場を示すものではありません
神奈川県出身。東京医科歯科大学医学部看護学科卒業。青年海外協力隊を経て英国キングス・カレッジ・ロンドンにてインターナショナル・チャイルド・スタディ学修士号取得。日本のNGOで国内外の支援活動に従事。JPO制度を利用してUNICEFインドネシア事務所に入職し、2024年から現職。
※JPO:国際機関と各国政府の取り決めに基づき、一定期間、各国から国際機関に派遣される非正規の職員