世界で働く
日本人職員
©Akiko Sakaedani
アフリカ大陸の東海岸、赤道直下の国ケニア。地域最大のモンバサ港を擁し、近隣諸国の玄関口として経済の中心を担っています。また、多くの国立公園や動物保護区があり、豊かな自然環境は重要な観光資源になっています。
しかし近年、干ばつや水害などが頻発。子どもたちが気候変動の影響を大きく受けています。気候変動による災害と隣り合わせの世界というのは、いつ日常がひっくり返ってもおかしくない世界。
異常気象に備え、気候変動に適応していくため、ケニアの若者たちと地域社会の行動変容を促す活動に取り組む榮谷の一日をお伝えします。
ケニアは医療や教育制度が整備されていて、サハラ以南のアフリカのなかでは進んだ国です。一方で気候変動は、干ばつや洪水、バッタの異常発生という形で住民の生活を脅かしています。その影響から、栄養不良や病気、移動生活によって教育機会を奪われ、児童労働や児童婚を強いられる子どもたちもいます。アフリカ全体でも枯渇する水や牧草地をめぐる争いが増えており、気候危機における社会正義のあり方について、子どもたちと早くから考えていくことは重要です。
私は前任地ルワンダで同国初の子ども番組を立ち上げました。NHKの幼児向け番組「お母さんといっしょ」をお手本に、ラジオやテレビを通して子どもと親の教育をめざしたのです。子どもたちには昔話や歌を聞かせて手洗いの大切さやお友達と仲よく遊ぶ方法を教え、親の世代には専門家を招いて子どもに語りかける言葉の大切さや体罰なしにしつける方法を解説しました。人生で大切なことを楽しく学べるこの番組は『イテテロ』と名付けられ、瞬く間に全国一の人気番組に成長。目が見えないために学校をあきらめていた男の子がイテテロを聞いて学校に通うようになるという奇跡のようなエピソードまで……。子どもたちが自分の人生の主人公として生きるためには、正しい行動を楽しく教える「行動変容」の仕事が必要だと実感した出来事でした。
こうした経験から、現在はケニア事務所で約20人のチームを率い、気候変動で生活習慣を変えざるを得なくなっている遊牧民族の子どもたちが新しい環境で生きていくのに必要な知識や能力を身につけるプロジェクトを進めています。若者が気候変動を学んでその成果をラジオで発信することで地域の人々の意識を高め、同時に長老や宗教指導者とも対話を重ね協力を要請し、地域社会全体の変容を促すプロジェクトです。ケニアの若者たちの知恵とエネルギーが、異常気象に備え、気候変動に適応していくための力になると信じています。
ケニアでエチオピアン
ナイロビの国連の建物内にあるエチオピア料理のお店は平日正午に開店。できたてのお料理からおかずと副菜と炭水化物を一品ずつ選べます。今日はチキンとゆで卵を煮込んだカレー「ドロワット」をいただきました
※データは主に外務省HP、『世界子供白書2021』による
※地図は参考のために記載したもので、国境の法的地位について何らかの立場を示すものではありません
東京大学を卒業後、外資系銀行勤務を経て異文化コミュニケーション修士号、公衆衛生学修士号を取得。2004年にユニセフ職員として東欧に赴任し、ニューヨーク本部、中東、アフリカで20年の経歴を積む。ルワンダで子ども番組を立ち上げた経験をつづった『希望、きこえる?』は厚生労働省児童福祉文化財に選定され、今年度より小学6年生の教科書に掲載されている。