vol.279 2023 autumn

ユニセフ・ケニア事務所
子どもの保護チーフ

メザーズ惠理

(プロフィールはこちら

 職場の食堂に落ちていた
 ところを救出したカメレオンと
 ©Eri Mathers

豊かな自然が残り、多様な民族が暮らすケニア。アフリカを代表する国立公園や国立保護区があり、多くの野生動物が生息。サファリツアーなどを楽しめます。

一方で、アフリカ有数の都市ナイロビを擁し、東アフリカ地域の玄関口として、近年、堅調な経済成長を遂げています。ただ、「アフリカの角」と呼ばれる地域にあるケニア北東部では、長引いた干ばつで多くの子どもたちが栄養不良に陥っています。また、都市部でも貧困層が増え格差が拡大しているなど、様々な問題も抱えています。

そんなケニアで「子どもの保護」分野の取り組みにエネルギーを注ぐメザーズ惠理の一日をご紹介します。

ケニア基礎データ

面積
58.3万平方キロメートル(日本の約1.5倍)
人口
約5,300万人(2021年:世界銀行)
5歳未満児死亡率
37/1000出生あたり(2021年)

子どもの保護

ユニセフの活動のなかでも少しわかりにくい「子どもの保護」分野の取り組み。定義は、子どもを暴力、虐待、搾取から守ることです。社会福祉と少年司法が主な領域で、教育や保健分野にも横断します。主な担い手はソーシャルワーカー、そして各コミュニティのリーダーやボランティアの方々も重要な役割を果たします。

2008年にJPO(*)としてユニセフのシエラレオネ事務所で活動をはじめてから15年ほど経ちます。子どもの保護というのはとても大事な分野で、子どもが守られない環境では、教育や保健分野の支援活動も十分な効果を出すことができません。にもかかわらず、国際社会でも、それぞれの国でも、十分な資金が割り当てられていない現状があります。

干ばつ支援
干ばつの影響でソマリアからケニアへの難民が増加。白いシャツの少年は、ソマリアで両親を殺され、ケニアの難民キャンプでユニセフの支援を受けています
©Eri Mathers
支援者の現地視察
資金集めは重要な仕事のひとつ。女性器切除(FGM)を減らすための活動の支援者である米国政府の現地視察に同行
©Eri Mathers

そのようななか、仕事の内容は多岐にわたりますが、ユニセフ内外で、子どもの保護のプログラムの優先度が少しでも上がるように様々な人に働きかけることにエネルギーを費やしています。

*JPO:ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(Junior Professional Officer)は、国際機関と各国政府の取り決めに基づき、一定期間、各国から国際機関に派遣される非正規の専門職員

困難はあっても

現在は、ケニア事務所で、子どもの保護プログラムのチーフをしています。2019年の子どもに対する暴力に関する調査によると、ケニアでは、半数以上の子どもたちが暴力にあった経験があると回答しています。しかしソーシャルワーカーは350人ほどしかおらず、まったく足りていません。

一番注力しているのは、支援プログラム実施のパートナーとなる担当省庁により多くの予算がつくよう、様々なサポートをすることです。予算官専用のトレーニングを作ったり、財務省に強く働きかけるための投資プランを作るお手伝いをしたりしています。

海外を転々としながらの勤務と子どもの教育など、歳を重ねるほど悩みが増えていきますが、政府の機能を補完する仕事はやりがいがあります。ユニセフも完璧ではありませんが、性差や肌の色を含むバックグラウンドに制限されない職場環境も魅力です。多大なサポートを受けて働かせてもらっており家族にも感謝しています。

毎週月曜日朝のミーティング
チーム長の毎週月曜日の朝のミーティング。オフィスは6割ほどの人数分しか席がなく、コロナが収まってからも一定数の人が常にリモートワークしています
© Eri Mathers
緑の多いナイロビ
我が家には、ネパール(ひとつ前の赴任地)とケニア生まれの保護犬がいて、近所の管理された森に散歩に行きます。緑の多いナイロビは最高の環境です
© Eri Mathers

メザーズ惠理
子どもの保護チーフのある一日

私の“お仕事ご飯”

© Eri Mathers

カメレオンもいた食堂!

安全基準を満たした広大な国連コウンパウンドと呼ばれる敷地内には複数の国連機関が入り、レストラン、食堂、カフェテリアと5カ所ほど食事をとれるところがあります。一番近いカフェテリアでサンドイッチで済ますことが多いです。中身を選ぶと、ひとつずつ作ってくれます。巻きずしコーナーもあります。

※データは主に外務省HP、『世界子供白書2021』による
※地図は参考のために記載したもので、国境の法的地位について何らかの立場を示すものではありません

Profile

めざーず・えり

英国の大学院で修士号(現代紛争平和学)取得後、スリランカ、パキスタン、インドネシア、スーダンにて、国際NGO、財団法人、国連PKO等を通して緊急支援に従事。2008年JPOとしてユニセフへ。シエラレオネ、南アジア地域事務所、東南アフリカ地域事務所勤務を経て、2023年1月より現職。二児の母。趣味は絵を描くこと。X(Twitter): erimathers