世界で働く 日本人職員
職場の食堂に落ちていた
ところを救出したカメレオンと
©Eri Mathers
豊かな自然が残り、多様な民族が暮らすケニア。アフリカを代表する国立公園や国立保護区があり、多くの野生動物が生息。サファリツアーなどを楽しめます。
一方で、アフリカ有数の都市ナイロビを擁し、東アフリカ地域の玄関口として、近年、堅調な経済成長を遂げています。ただ、「アフリカの角」と呼ばれる地域にあるケニア北東部では、長引いた干ばつで多くの子どもたちが栄養不良に陥っています。また、都市部でも貧困層が増え格差が拡大しているなど、様々な問題も抱えています。
そんなケニアで「子どもの保護」分野の取り組みにエネルギーを注ぐメザーズ惠理の一日をご紹介します。
ユニセフの活動のなかでも少しわかりにくい「子どもの保護」分野の取り組み。定義は、子どもを暴力、虐待、搾取から守ることです。社会福祉と少年司法が主な領域で、教育や保健分野にも横断します。主な担い手はソーシャルワーカー、そして各コミュニティのリーダーやボランティアの方々も重要な役割を果たします。
2008年にJPO(*)としてユニセフのシエラレオネ事務所で活動をはじめてから15年ほど経ちます。子どもの保護というのはとても大事な分野で、子どもが守られない環境では、教育や保健分野の支援活動も十分な効果を出すことができません。にもかかわらず、国際社会でも、それぞれの国でも、十分な資金が割り当てられていない現状があります。
そのようななか、仕事の内容は多岐にわたりますが、ユニセフ内外で、子どもの保護のプログラムの優先度が少しでも上がるように様々な人に働きかけることにエネルギーを費やしています。
*JPO:ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(Junior Professional Officer)は、国際機関と各国政府の取り決めに基づき、一定期間、各国から国際機関に派遣される非正規の専門職員
現在は、ケニア事務所で、子どもの保護プログラムのチーフをしています。2019年の子どもに対する暴力に関する調査によると、ケニアでは、半数以上の子どもたちが暴力にあった経験があると回答しています。しかしソーシャルワーカーは350人ほどしかおらず、まったく足りていません。
一番注力しているのは、支援プログラム実施のパートナーとなる担当省庁により多くの予算がつくよう、様々なサポートをすることです。予算官専用のトレーニングを作ったり、財務省に強く働きかけるための投資プランを作るお手伝いをしたりしています。
海外を転々としながらの勤務と子どもの教育など、歳を重ねるほど悩みが増えていきますが、政府の機能を補完する仕事はやりがいがあります。ユニセフも完璧ではありませんが、性差や肌の色を含むバックグラウンドに制限されない職場環境も魅力です。多大なサポートを受けて働かせてもらっており家族にも感謝しています。
カメレオンもいた食堂!
安全基準を満たした広大な国連コウンパウンドと呼ばれる敷地内には複数の国連機関が入り、レストラン、食堂、カフェテリアと5カ所ほど食事をとれるところがあります。一番近いカフェテリアでサンドイッチで済ますことが多いです。中身を選ぶと、ひとつずつ作ってくれます。巻きずしコーナーもあります。
※データは主に外務省HP、『世界子供白書2021』による
※地図は参考のために記載したもので、国境の法的地位について何らかの立場を示すものではありません
英国の大学院で修士号(現代紛争平和学)取得後、スリランカ、パキスタン、インドネシア、スーダンにて、国際NGO、財団法人、国連PKO等を通して緊急支援に従事。2008年JPOとしてユニセフへ。シエラレオネ、南アジア地域事務所、東南アフリカ地域事務所勤務を経て、2023年1月より現職。二児の母。趣味は絵を描くこと。X(Twitter): erimathers