ユニセフが支援するポーランドの託児所で、あたたかい日差しのなか、ウクライナ難民のヴィクトリアが友だちとブランコで遊んでいます。ポーランドに逃れた難民の94%以上が女性と子どもたち。心の傷を負った子どもたちに少しでも笑顔が戻るよう、同所ではさまざまな遊びと学びの機会が提供されています。
© UNICEF/UN0684301/Moskalenko
巻頭言
SDGsが国連総会で採択された2015年。欧州で、「難民危機」が起こりました。
戦闘が激しさを増していたシリアをはじめ、中東やアフリカ、中央アジアの国々を逃れた人々がヨーロッパをめざし、それまで〝支援する側〟の立場だった国々が、次々とユニセフの〝支援の現場〟に。欧州各地で『unicef file』で紹介する「ブルードット」などの支援を展開するなか、難民や移民を受け入れた先進各国にも、貧困や格差の拡大などの理由から、助けを必要としている子どもが多くいたことが、SDGsが標ぼうする「誰ひとり取り残さない」も背景に浮き彫りになりました。
とはいえ、国連機関が、その国の政府から求められてもいない支援や政策推進のためのアドボカシー活動を勝手にはじめるわけにはいきません。しかしユニセフには、先進各国の社会や政府、企業に子どもの権利をめぐる状況の改善を働きかけてきたユニセフ協会(国内委員会)という強力なパートナーがありました。
「今後はいっそう、各国ユニセフ協会のアドボカシー活動をサポートしていく」というユニセフ本部の呼びかけに、欧州の多くのユニセフ協会が共通して示した自国の課題のひとつが、「メンタルヘルス」でした。こうして、欧州を中心としたユニセフ協会が主導するアドボカシー活動として始まったユニセフのメンタルヘルス分野の取り組みは、やがて、そして特に、長期にわたる学校閉鎖をもたらしたコロナ禍を経て、ユニセフが世界で展開する支援のなかでも、重要な活動として認識されるようになりました。
2017年以来、韓国の人気グループBTSがユニセフと協力して発信していた「Love Myself」(自分自身をまず愛そう)という言葉は、コロナ禍で孤立した世界中の子どもと若者から多くの共感を集めました。世界中の子どもと若者が直面するメンタルヘルスの課題と、ユニセフの取り組みをご紹介します。
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2023.10.1
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2023.10.12
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編集後記
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日本のメンタルヘルスに目を向けてみると、十代の死因の第一位が「自殺」という痛ましい統計もあります。
ただ、心の病の治療現場においては、今から55年も前にWHOから是正を勧告されたにもかかわらず、日本の精神科病床数はいまだ断トツで世界一位。一方、精神科医の数はOECDのなかでは下から数えたほうが早いほど。この不均衡は、患者を社会から隔離する「社会的入院」が多く行われてきたためといわれています。
当時は「母原病」ともいわれた「分裂病」も「統合失調症」に呼称が変わり、現在では多くの患者や家族が待ち望んだ治療薬も処方されるようになりました。
体と同じく、心の健康も早期発見がカギ。もっと早く、適切に対応できていれば……というケースは身近なところにもあります。
若者や子どもの自殺、精神医療現場の事件。そういった報道に触れるたびに心が痛みます。「隔離ではなく、早期発見、早期治療」が望まれます。
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