世界で働く
日本人職員
© Yoko Wada
南米大陸の太平洋岸に位置する国、ペルー。
海岸地帯、アンデス山脈地帯、アマゾン地帯にまたがり、先住民も多く、地理的、文化的な多様性に富んだ国です。銀、銅、金、鉛、亜鉛等の鉱物資源に加え、海洋資源、森林資源も豊富で、近年、めざましい経済成長を遂げました。
1899年(明治32年)南米で最初に組織的な日本人移住を受け入れた歴史をもち、近年、政情不安にあえぐベネズエラからも多くの移民を受け入れています。ナスカの地上絵や、インカ帝国時代に築かれたマチュピチュ遺跡といった魅力的な世界遺産もある国。
しかし、地域間格差が大きく、いまだ貧困問題も深刻です。
そんな多様性の国で、子どもたちの安全を守る活動に取り組む和田の一日をお伝えします。
中南米(ラテンアメリカ)では開発が進んで低所得国が減り、ほとんどの国が高中所得国となりました。ただ、さまざまな形の貧困が存在し、格差の問題はいまも深刻です。2030年までに持続可能な開発目標(SDGs)を達成するためには、まだまだ国際的な支援が必要な状況。そのためユニセフは、ラテンアメリカ・カリブ海諸国の計36の国で活動しています。
私が活動しているペルーも高中所得国ですが、都市部とそれ以外の地域の格差が大きいことが課題となっています。たとえば子どもの健康に関することでは、貧血の子どもの割合が、首都リマでほぼ35%のところ、その他地域では50%、アマゾン地帯やアンデス山間地帯では60~70%に達するところもあります。
また、子どもの保護分野においても、73%以上の子どもたちがいままでに物理的・心理的暴力を受けたことがあり、性暴力にいたっては、35%以上が何らかの性暴力を受けたことがあるとされています。開発が進んでいても、こうした複雑な課題はなかなか解決されず、政府からの支援要請を受けることが多いのが現状です。ユニセフならではの専門性や強みを活かして仕事をしており、日々やりがいを感じています。
2017年以降、国内情勢の悪化で多くのベネズエラ人が移民・難民となった問題では、ペルーは世界で2番目の受け入れ国になっています。推定150万人のベネズエラ人がペルー国内にいると言われており、こうした移民・難民をユニセフ含む国連組織は一丸となって支援しています。
私のチームは、国境地域で子どもの保護支援をしているほか、子どもや家族にやさしい移民政策の実現のため、国の入国管理機関や子ども省とともに仕事をしています。移民問題では、国のちがいを超えて問題を解決することが必要です。近隣の国事務所や地域事務所の同僚たちと連携しながら仕事をしていることも、ユニセフならではだと思います。
グルメ天国
ペルーは南米のなかでもグルメ大国で、どこでもおいしいご飯が比較的安価で食べられます。ランチはお弁当を持っていくことが多いのですが、同僚とレストランにいくことも。新鮮な魚介で作られた「セビーチェ」などよく食べます
※データは主に外務省HP、『世界子供白書2021』による
※地図は参考のために記載したもので、国境の法的地位について何らかの立場を示すものではありません
東京都出身。10代より子どもの人権活動を始める。英国サセックス大学卒業後、同大学国際刑法修士号、ロンドン大学人権修士号取得。2004年よりユニセフ職員として、南米、アフリカ、中央アジアなどの計7か国で子どもの保護の分野から緊急人道支援、開発支援にかかわる。2019年より現職。