世界で働く
日本人職員
© UNICEF South Africa/ 2023
アフリカ大陸の最南端、インド洋と大西洋が接する要衝の地に位置する南アフリカ共和国。年間を通じて晴天の日が多く、2000m級の山々、砂漠と森林、高原と平野といった変化に富んだ地形を反映して、動植物の宝庫といわれています。
天然資源が豊富で、とくに金、クロム鉱、プラチナ、バナジウム等の生産量、埋蔵量は世界上位。サハラ以南アフリカのGDPの約4割を占める、群を抜いたアフリカの経済大国です。アパルトヘイト(人種隔離と差別)という苦難の歴史を克服した国民は、誇りをもって自国を「レインボー・ネイション(七色の国民)」と呼びます。
そんな多様な顔をもつ国で、子どもの保護活動に邁進する山野の一日をお伝えします。
南アフリカは経済活動が盛んな高中所得国で南部アフリカのエンジンとなっていますが、1990年代初頭まで続いたアパルトヘイトの影響で、いまも所得格差が世界最大という側面ももちます。
赴任してすぐ、首都ヨハネスブルグがあるハウテン州のユニセフが支援している地域を訪れる機会がありました。事務所から車で45分、高層ビルやショッピングモールの間を抜け、高速を降りて横道に入ると、電気や水の供給もままならないトタンでできたタウンシップ(旧黒人専用居住区)が広がっていました。道路1本隔てて富と貧困が隣り合う現実が衝撃的でした。
子どもの保護活動は、日本でいう児童福祉の分野にあたります。家庭内暴力や虐待にあった子どもたち、保護者のいない子どもたち、法に触れてしまった子どもたちへの支援体制を政府とともに構築、改善していくといった活動です。
タウンシップの中高生たちの話でとくに胸を痛めたのは、貧困からいわゆる「援助交際(パパ活)」によって家族の生計を助ける女子中高生が多いことでした。中高年男性との性的搾取関係から暴力の被害者になったり、HIVに罹患したり、妊娠によって学校を中退したりする女の子が大勢いるというのです。南アフリカはHIV新規感染者数が世界でもっとも多く、なかでも15歳から24歳の女性の高い罹患率には、このような背景がありました。
タウンシップに住む25歳のある女性は、16歳時に性的搾取と暴力にあったみずからの経験をもとに、ユニセフの暴力撲滅キャンペーンに参加し、中高生への啓発活動に取り組んでいます。十代の妊娠、HIV/エイズ、ドラッグ、飲酒、暴力団への勧誘など話しにくい課題を、同じ目線で話してくれる姿に励まされました。
こうした活動を通じて、若者や中高生が自分の言葉で同世代へメッセージを伝えるプログラムの大切さをあらためて感じました。
和風サラダ!
家で昼食をとる家族には作り置きをしているが、自分はスーパーのサラダで済ませることが多い。黒米と枝豆のサラダに醤油ドレッシングといった和風なものも手に入る。
※データは主に外務省HP、『世界子供白書2021』による
※地図は参考のために記載したもので、国境の法的地位について何らかの立場を示すものではありません
大阪府出身。同志社大学経済学部卒業。英国サセックス大学開発学研究機関(IDS)開発学修士号取得。国際NGOの緊急支援時の児童保護専門官として15カ国で活動。2016年からユニセフに勤務し、イラク、イエメン事務所を経て2022年12月より現職。