若者たちがボランティアや起業、アドボカシー活動、持続可能な経済活動を通じて気候変動や環境問題に取り組むために必要なグリーンスキルと呼ばれる知識や技術の習得などを通じて、気候変動に立ち向かうことを支援する取り組みです
世界中のほぼすべての子どもたちが、熱波、洪水、水不足、サイクロン、鉛汚染など、なにかしらの気候・環境危機に直面している─ユニセフの2021年の報告書はショッキングな事実を浮き彫りにしました。また、気候に関連した災害は、1980年代と2010年代を比べて2倍に増えたという報告もあります。異常気象や災害が増え、今や世界中がその危険にさらされていますが、これからの時代を生きていく子どもたちにとって、気候変動はこの先何十年にもわたって、それぞれの人生に影響し続ける課題です。
こうしたなか、世界各地で子どもや若者が声を上げ、気候変動に立ち向かうさまざまな活動が繰り広げられています。
大気汚染が深刻なモンゴルでは、2019年に環境活動に取り組む若者たちのネットワークがユニセフと現地の団体との協力のもとスタート。大気汚染レベルの測定とソーシャルメディアでの発信を中心に3000人以上が参加しています。
レバノンでは廃棄物を肥料や農業用のガスに変える装置を若者が開発。ユニセフの支援で「BIOwayste」というスタートアップ企業を立ち上げ、環境問題の改善と雇用の創出に貢献しています(コラムで詳細をご紹介しています)。
ほかにも、モルディブではサンゴ礁の保護活動、キルギスではボランティアによる防災教育の啓発活動など、若者たちが世界各地で活動を展開しています。
こうした若者の活動を加速させるためにはじまったのが、「グリーン・ライジング」です。2023年12月の気候変動に関する国際会議、COP28で公式に発表され、取り組みへの参加が全世界に呼びかけられています。
グリーン・ライジングは、2023年から2025年にかけて、1000万人の子どもや若者が、ボランティアや起業、アドボカシー活動、持続可能な経済活動を通じて気候変動に立ち向かうアクションを起こすためのグリーンスキルと呼ばれる知識や技術の習得を支援する取り組みです。気候変動問題において、もっとも弱い立場にいる子どもたちが、教育の機会やスキルを磨く機会を得て、持続可能な社会をつくる担い手として、変化を生み出すリーダーになることをめざしています。
一方、こうした取り組みを支援する体制は十分とはいえません。ユニセフもメンバーである「環境に関する子どもの権利イニシアチブ」(CERI)が2023年6月に発表した報告書によると、世界の主要な気候変動対策の資金のうち、子どもに対応した活動を支援していると分類できたものは、わずか2.4%でした。
これは、①気候危機によって子どもたちが経験しうるリスクに対応しているか、②子どもにとって重要な社会サービスのレジリエンス(回復力)を強化しているか、③変化の担い手としての子どもたちを支援しているか、という基準で算出された数字です。わずか2.4%という結果から、子どもに重点を置いた気候変動対策への資金不足が指摘されています。
グリーン・ライジングの取り組みのひとつが、各国政府や企業からの資金によって共同で若者の活動を支援していくものです。賛同する政府や企業は支援額に応じて、どこの国でどのようなプログラムをおこなっていくか、ユニセフとともに計画を立てていきます。
もっとも早く参加へ手を挙げた企業は、フランスに本社を置く総合コンサルティングファーム。3年間のパートナーシップがはじまり、現在、以下ふたつの計画が動き出しています。
ひとつは、草の根で活動している既存の若者ボランティア団体が活動の幅を広げられるよう、資金面や技術面をサポートしていくプログラム。ナイジェリア、南アフリカ、ブラジルの若者たちを支援します。
もうひとつは「Green YOMA」と呼ばれるプログラムです。YOMAというオンラインツールに登録すると、さまざまな分野の学習コースを履修することができたり、ボランティア活動に参加する機会が得られたりする仕組みになっています。Green YOMAでは、特に子どもたちが環境保全や資源の循環といった学びを深められる学習コンテンツを用意しており、マダガスカルの23の地域と南アフリカでこのプログラムがはじまろうとしています 。
ほかにも、カナダ政府やソフトウェア開発会社、総合コンサルティングファーム大手も、このグリーン・ライジングの取り組みへの参加に名乗りを上げています。こうした各国政府や企業との共創で、今後さらに若者の活動の輪が世界中に広がっていくことが期待されています。
長引く経済危機の中、気候変動による経済のさらなる悪化が懸念されるレバノンで、ユニセフは気候変動に対する革新的変革の担い手として青少年を支援する取り組みを推進しています。レストランから日々排出される有機廃棄物を処理することに取り組んだヤスミンさんとレイネさんは、ユニセフの指導と資金援助を通じて廃棄物処理装置を作り、会社を立ち上げました。この装置は、有機廃棄物を加えるだけで自動的に農業用ガスと有機肥料に変えることができます。「私たちの目標は、レバノンのすべてのレストランにこの装置を導入することです」と若い起業家たちは胸を膨らませます。
※地図は参考のために記載したもので、国境の法的地位について何らかの立場を示すものではありません