CRE…子どもの権利を大切にする教育。学校や園において、「子どもの権利条約」に定められている子どもたちの権利が守られる教育環境を整え、子どもたちの健やかな成長に貢献する取り組み。
子どもたちが1日のなかで多くの時間をすごす学校や園(幼稚園・保育園など)は、学力だけでなく、心身の健やかな発達においても大切な役割を担っています。ユニセフはこうした学校・園で、先進国を中心に「子どもの権利を大切にする教育」を推進しています。英語の頭文字をとって短く「CRE (Child Rights Education)」とも呼ばれるこの取り組みは、「子どもの権利条約」で定められた子どもの権利をさまざまな側面から守り、子どもたちの持てる力を育て、可能性を最大限に伸ばしていくことをめざしています。
具体的には、①すべての子どもの「学ぶ権利」を保障し、②人権や「子どもの権利」について学び、理解を深め、③子どもたちの権利が守られた教育環境を整え、④他者の権利に目を向け、子どもたちの社会に貢献する力を養うこと。CREはこれらの4つの側面から構成されており、ひとつの大きな樹で表現することができます。(下図参照 ※より詳細な資料はこちらから)
CREの取り組みは、西欧諸国のユニセフ協会を中心に15年以上前に始まりました。その先駆けであった英国では、2007年から「権利を尊重する学校づくり」を展開しています。子どもたちは学校で、自分自身や同級生、さらに先生たちや周囲のおとなたちもみな権利の主体であることを知り、互いを尊重しあうことの大切さを学んでいきます。開始から10年後におこなわれた調査からも、学校で子どもの権利を尊重することは、子どもたち自身や教育現場に多くの効果をもたらすことが実証されました(下グラフ参照)。
いまでは、英国国内の約5000校がこの取り組みに参加し、160万人以上の子どもたちが「権利を尊重する学校」に通っています。
日本ユニセフ協会は、日本でのCREの取り組みを、約4年前に本格的に開始しました。ちょうど同じ頃、先進国の子どもたちの幸福度を調査したユニセフの報告書『レポートカード16(*)』が、日本の子どもたちの「身体的幸福度」と「精神的幸福度」の間に大きな差があることを示しました。また昨年度、日本ユニセフ協会が小中学校の先生と児童・生徒を対象に実施した「子どもの権利」に関する調査でも、子どもたちが学校において精神面でのサポートをもっと必要としていることが見えてきました。
*『レポートカード16』の詳細はこちらから
私たちは教育を通して「子どもの権利」を推進することで、日本の子どもたちのいまと未来がよりよくなると信じ、CREに取り組んでいます。
子どもたちは、自らの持つ権利を知ることで、自分の価値に気づきます。実際に「子どもの権利」ついて学んだ子どもからは、自分に権利があることを知って「うれしかった」、「安心した」、「もっと自分を大切にしたいと思った」という声が聞かれます。
自分だけでなく、まわりの子どもたち、そしておとなたちにも人権があることを学ぶことで、個々の違いを認め合い、お互いを尊重することも学びます。技術の発達や人々の国境を越えた移動により世界がますますつながっていく今日、日本の子どもたちが多様性を尊重する心を育むことは重要でしょう。
CREではまた、おとなが子どもの意見や思いにしっかりと耳を傾けることも大事にしています。自分の意見が大切にされると感じた子どもは、学校や園で安心して前向きにすごすことができるようになります。
こうしてCREを通じて、ありのままの自分を受け入れる自己肯定感や自分ならできるという自信を育んだ子どもたちが、広い視野で社会に目を向け、世界共通の課題に取り組む力を養い、〈持続可能な社会のつくり手〉として成長していくことを願っています。
「こども基本法」が施行され、子どもの権利が守られる社会づくりが推進される時代。子どもたちのいまと未来のために、まず、教育現場で子どもたちの権利が尊重される環境づくりが進んでいくことを願い、日本ユニセフ協会はCREに取り組んでいます。
CREの取り組みの一環として、日本ユニセフ協会が提唱している「子どもたちの権利が守られる学級憲章(学級目標)づくり」。この活動は、先生と子どもたちがともに「子どもの権利条約」を通して子どもの権利について学ぶところから始まります。次に、一人ひとりの権利が大切にされる環境をつくるために、自分にできることは何か、また権利を尊重するということはどんなことか、みんなで考え「学級憲章(学級目標)」としてまとめていきます。主体的に考え行動する子どもたちの力を養うとともに、自分だけでなく他者の権利にも目を向ける機会とし、お互いを尊重しあえる、だれもが安心してすごし成長できる学級づくりをめざします。