Skills4Girls…男女格差の是正のため、さまざまな技能習得の機会を女性や女の子たちに提供するプログラム。世界各国の女性と女の子のために、教育、デジタルツールの活用、起業、ライフスキル習得など4つの分野で機会創出に取り組んでいる。
「ジェンダー平等」や「女性の社会進出」がSDGsにも掲げられ、国際社会は男女の格差是正をめざしています。しかしその溝はまだまだ深く、ユニセフの統計によれば、「教育も職業訓練も受けられず、仕事もない若者(15歳~19歳)の割合」は、男の子の10%に対し、女の子は25%。また、約10億人の女の子や女性が就業のために必要なスキル(技能)を身に付けられていません。
こうした不平等を解消し、女の子と女性の自立を後押しするため、Skills4Girls(スキルズ・フォー・ガールズ/女の子たちに技能を)プログラムがはじまりました。2019年からの6年間で、世界で1150万人の女性と女の子が必要な技能を身に着け、働く機会を得られるよう支援しています。
Skills4Girlsでは、以下4つの分野でさまざまな機会を提供しています。
① 科学・技術・工学・数学の教育分野(STEM教育)
② パソコンやインターネットなどのデジタルツールの活用
③ 起業
④ 問題解決・交渉・コミュニケーション能力などのライフスキル
国によって差異はありますが、これら4つの分野の男女間の機会格差は一様に大きく、特に①のSTEM教育分野の大学卒業生に占める女性の割合は、世界の3分の2の国で15%以下といわれています。
ご存知のとおり、ユニセフの活動は、各国政府などの公的機関からの任意の拠出や、個人、学校や団体の皆さまからのご寄付によって支えられています。Skills4Girlsも例外ではありません。ここからは、株式会社資生堂のグローバルラグジュアリーブランド、クレ・ド・ポー ボーテとのグローバルパートナーシップを通じ支援が続く、バングラデシュの事例をご紹介します。
バングラデシュは、過去数十年にわたり安定的な経済成長を続けてきましたが、教育面ではまだ課題が残っています。初等教育修了率は8割を超えるものの、中等教育ではそれが6割に下がり、多くの子どもたちが学業を続けられずに中退しています。
また、児童婚は法律上禁止されているものの、実際は2人に1人の女の子が18歳未満で結婚しています。東南アジアではワースト1。世界でも、8番目にわるい数字です。
そこでバングラデシュでは、国全体の〝仕組みづくり〟を念頭に、「指導要領の策定と教科書の開発」や「代替教育プログラム」といった側面から女の子たちを支援しています。
「指導要領の策定と教科書の開発」は政府とユニセフの共同で行われています。暗記や反復に頼る指導法から、理論と実験を融合した課外授業や、パソコンを用いたプレゼンテーション能力を養う授業、男女の役割の固定観念に囚われないような伝え方を意識した教科書の開発など、国全体の教育内容や教材の質の改善を図っています。
「代替教育プログラム」は、学校に通うことができない女の子たちに職業訓練などを提供します。地域にどのようなビジネスがあるか、職業としてどのような需要があるかを考慮し、現地の状況にあった職業訓練をおこないます。縫製技術やパソコンスキルの習得、スマートフォン修理技術など、現地のニーズに合わせてさまざまな分野をカバーしています。
北部の都市マイメンシンに住むスモーナさんは、経済的な事情で学校を中退。いまはユニセフが支援する代替教育プログラムで学んでいます。
「学校をやめて家にいると、結婚の話がたくさん来ました。でも縫製の仕事の話を聞いたときに、私は、結婚以外に働くという道があるのだと知りました」と当時の心境を振り返るスモーナさん。マイメンシンのお店で洋服の仕立てを習得中です。彼女のお母さんも「なにもしてあげられず、すぐに結婚させる以外に道はないと思っていました。でも、このプログラムのおかげで数年先の娘の将来を考えられるようになりました。技能習得が終われば、今度は先生になることもできます。自分の足で立って未来を築くことができるんです」と話します。
代替教育プログラムで学んだ女の子の約9割は、プログラム修了後に就業しています。学校に通い続けられなくても、こうした代替プログラムを受けることで、古い慣習に阻まれた時代とは別の未来へ、女の子たちは羽ばたいていくのです。
ペルーでは ウェブプログラミングを学べるコースが、Skills4Girlsプログラムの一環で開催されています。このコースで学ぶイェセニアさん(19歳)は、経済的理由で中学校に進めず、13歳でベビーシッターとして働いたり、コース参加後も家庭の事情で休まなければならなかったりと、学ぶための道のりにはさまざまな困難が立ちはだかりました。その後コースに復帰し、今はプログラマーとしてのキャリアを夢に描いています。「いつか地方に住むペルーの女の子たちに、夢は叶えられると伝えたい。ユニセフが私を支援してくれたように、私も彼女たちを支援したい」と夢を語ります。ペルーでは、プログラマーに占める女性の割合はわずか8%。イェセニアさんがあきらめずに学び続ける姿がロールモデルとなり、挑戦する女の子たちを勇気づけています。