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2023年10月、中東・パレスチナのガザ地区で激化した紛争により、子どもたちに甚大な被害がでています。全長72.6キロメートルの国境の壁に閉ざされたガザ地区では、連日続いた砲撃により170万人の住民が避難生活を強いられ、家々や病院、給水施設や電力・通信網など、生きるために不可欠な社会インフラも破壊されてきました。
約3万2000人以上の尊い命が奪われ、その7割を女性と子どもが占めています。かろうじて生き延びている子どもたちの多くも、一生消えることのない心や身体の傷に苦しめられています。この紛争で人道支援を必要としている子どもの数は、ガザ地区とヨルダン川西岸地区で150万人におよびます。
マルワさん(21歳)は、ガザ地区で外科医をめざして医学部に通うアル・アズハル大学4年生です。病院での研修を前に、白衣や聴診器を準備して楽しみにしていた2023年10月、戦闘が激化し、彼女の日常は止まってしまいました。命の危険にさらさられる避難生活の中で、胸の内を語ってくれました。
「絶え間ない恐怖のなかで生きることは、とても疲れます。死ぬことは怖くありません。生き残ることのほうが怖いです。もし爆撃から生き残ったとしても、負傷して、麻酔なしで手足を切断しなければならない、生き残って愛する家族を失うかもしれない。家族の唯一の生存者になることが、どんな悪夢か想像できますか?」
マルワさんが避難していたハンユニスの避難所は包囲され、そばで何人かが亡くなりました。
「避難所にいた全員が、次は自分たちだと覚悟しました。翌日、私たちは避難所をあとにしました。ラファに向かう途中、私は泣いていました。避難するのは4度目。これが最後ではないこともわかっていました。母に行き先を尋ねると、『行き先が見つかるまで路上で寝るしかない』と言われました。『その夜、雨が降らないように祈りなさい』と」
数日前には、マルワさんたちが暮らしている避難テントのすぐ近くで爆撃がありました。
「耳をつんざくような爆発音で、テントが飛ばされそうでした。そして爆発の次の瞬間、私たちの近くで何かが落ちる音がしたのです。姪っ子を抱いた姉が寝ていた場所から50センチも離れていないところでした。わずか50センチで、世界で最も愛する家族を失っていたかもしれない、一瞬の出来事でした。私は人の命を救いたかったから医学部に入りました。今、私は愛する人の命さえ救うことができません」
死と隣り合わせの日々のなかで、マルワさんがまだかろうじて抱いている夢の話をしてくれました。
「昨日、妹に私の夢を話しました。医師が麻酔なしで手術をすることのない世界、電気がないせいで患者が亡くなることのない世界のことを。私は医療が人々を苦しみや死から救うことのできる世界を夢見ています。でも、この夢が叶わないのではないかと恐れています。政治的状況や対立だけでなく、私たちを人間として見てもらえることを祈っています。私たちは人間です。200万人がガザ地区に閉じ込められ、行く場所がありません。世界にとって私たちはもっと価値ある存在であるべきです。私たちには命があります。そして私たちは、人として自分の人生を生きることができるべきです」
ユニセフは、ガザ地区全域で子どもたちの切実なニーズに応え続けています。しかし、支援活動は、ますます困難で危険なものとなっています。ユニセフのスタッフはガザ地区にとどまり、必要としている子どもたちへの支援を続けています。ガザ地区への検問所が断続的に開かれ、人道物資が搬送されていますが、急増するニーズには足りません。
ユニセフは、すべての紛争当事者に対し、継続的な人道的停戦を実施し、人道支援が妨げられることなく安全に、必要としている人々に届けられることを強く求めています。
*本ページの内容は2024年3月現在のデータに基づいて制作されています。
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