vol.282 2024 summer

すべての子どもに必要だと思うことは、
「教育」です。

内田篤人 (プロフィールはこちら)

サッカー元日本代表

各界で活躍されている方に「子ども時代」を振り返っていただきながら、世界中のすべての子ども、一人ひとりの子どもたちにとって必要なことは何かを考えていく連載企画「for every child,_」。第29回は、サッカー元日本代表選手の内田篤人さん。2020年の現役引退後は、サッカー界で後進の育成のほか、水と衛生分野におけるユニセフのグローバルパートナーである(株)LIXILのSDGsアンバサダーとして、世界の衛生課題や、気象災害から子どもたちの暮らしを守る備えの大切さについて発信しています。3児の父でもあり、サッカー指導で子どもたちと触れ合う機会も多い内田さんに、ご自身の活動を通して子どもたちに伝えたいことを伺いました。

父が学校の体育の先生で、3歳くらいから週末は父に連れられて部活や試合をよく観にいっていたので、スポーツをやることは自然な流れでした。幼稚園の頃にJリーグが始まって、その頃からプロになる夢をずっと持ちながらサッカーをやっていましたが、もしなれなかったら、父のように教員になるというのも子どもの頃から決めていました。

僕は早生まれで体が小さい方だったし、自分よりサッカーが上手な子はたくさんいて、自分は「第二の夢」である教員になるのだろうなとの思いがずっとあったんです。それでもサッカーが好きで続けていたら、気がついたらプロになっていたという感覚です。

転機になったのは高校1年生のとき。日本サッカー協会がU-16アジア大会の選手を選抜する際に初めて「早生まれセレクション」という早生まれの選手だけを対象とした選考会を実施したことです。それまで県の地区選抜にも入ったことがなかったのですが、それをきっかけにU-16の日本代表に呼んでもらって一気に環境が変わりました。僕は早生まれじゃなかったら絶対プロにはなれていないんです。結局なにがチャンスかはわからないものです。

サッカー教室などに呼ばれていくと、子どもたちにまず、「ほとんどの子がプロにはなれません」というのと「ちゃんと勉強してください」というふたつのことを伝えます。厳しいことを言うようですが、プロになれない子の方が多いのが現実です。それでも好きなら、僕みたいに続けてほしいと思って伝えています。同時に、自分で考えたうえで、ほかの道にいくことはわるいことではないし、サッカーだけが人生のすべてではないので、勉強もしておけば今後の選択肢が広がると知っておいてほしいんです。

僕も高校受験のとき、サッカーが強い高校のなかで「進学校の清水東ならいいよ」と母に言われて勉強もしました。家から遠くて始発で通ったので、母は朝4時に起きて弁当を作って駅まで送迎してくれて。母の方が大変だったと思いますが、プロになれなかったときのことも考えてくれていたんです。だから僕も親として、子どもたちが好きなことをやりながら、きちんと教育も受けられるようにサポートしていきたいです。教育には机に向かう勉強と社会で生きていくための勉強があって、そのどちらも大事。さまざまな場所で多くのことを学んで、自分の未来を自分で切り開いていける力強い子どもがたくさん育ってほしいと思っています。

幼少期からサッカーに取り組んでいた(写真:本人提供)

Profile

うちだあつと

1988年3月27日生まれ、静岡県出身。2006年、鹿島アントラーズに加入。リーグ戦3連覇に貢献した。2010年7月にシャルケ04(ドイツ)へ移籍。2020年8月20日に引退を発表。欧州チャンピオンズリーグ、ワールドカップにも出場し、世界の大舞台で活躍した。2020年12月よりLIXIL SDGs アンバサダーを務める。

LIXILが気候変動の影響を受ける子どもたちのためにユニセフを支援 

気候変動対策と自然災害緊急支援の両方の活動を支援するプロジェクトの詳細はこちら