各界で活躍されている方に「子ども時代」を振り返っていただきながら、世界中のすべての子ども、一人ひとりの子どもたちにとって必要なことは何かを考えていく連載企画「for every child,_」。第26回は、メッセージ性の強い歌詞と圧倒的な歌唱力で心に響く歌を届けるシンガーソングライターのAIさん。“言葉や宗教が違っても人はそう違わない”と世界に訴える楽曲「Not So Different」や、今年5月の「G7広島サミット2023」でのライブパフォーマンスに平和教育プロジェクトなど、平和を呼びかける活動にも力を入れている彼女が、心を込めて歌い続ける想いを語ってくれました。
子どもの頃の私は、今では見ないようなすごい野生児で、常にどこかに登っていたり、学校の帰り道を側転しながら帰ったり、格好はいつも半袖短パン。ボーイッシュで腕力も強いし、負けず嫌いなので「強いね」とほめられると期待に応えたくなるタイプで、男の子と腕相撲して負けたことがなかったです。アメリカ人の母の影響で2歳からタップダンスを始めて、R&Bやダンスミュージックを聴いていたので、昔から歌ったり踊ったりするのも大好きでした。
母は色んな人種の知り合いがいて、小さい時からその環境が普通だったので、肌の色や違いを意識することなく育ちました。だから、高校時代にロサンゼルスで聖歌隊に入った時、黒人の中に日本人1人でも私は全然気にしていませんでした。ただ周りのみんなは警戒して最初は誰も隣に座ってくれなくて。ある日、当時流行っていたダンスを踊って見せたらみんなが集まってきて、そこから話しかけてくれるようになりました。ロサンゼルスでは、バスを乗り換える場所にいつもいるホームレスの人たちとの交流も思い出深いです。顔見知りになって色んな話をしたり、「ここを歩く時は気をつけるんだよ」と声をかけてもらったりして、みんな優しくしてくれました。
そういう経験をする中で、人種の違いだけじゃなく、さまざまな境遇の人と出会うことが大事だなと感じるし、絶対に分かり合えないなんてことはないと思っています。少なくとも私は他の人よりも人の心とつながれる自信があります。ただそのためには自分が心を開いて、信用してもらうためのことをまずやろうといつも思っています。最近は平和に関する活動が増えましたが、私の想いは昔から変わっていません。きっかけをもらえるなら時間が許す限り「ピースにつながることなら何でもやろう」と。だけど、それを自分の言葉で伝えることは大切にしています。人前でスピーチするのは苦手なので、やっぱり一番は歌でメッセージを伝えたいんです。言いたいことを考え抜いて、歌詞を書きながら泣いてしまうこともあるくらい、想いを込めて曲を作っています。
私は長女に「平和」という名前をつけています。それは、その言葉を言うたびに「とにかく世界が平和になることが一番」と思い出させてくれるから。そのためにどうしたらいいかは考える必要があるけど、まずその気持ちを持つことが大事。そして、みんなで協力し合えば、長くかかる問題も半分ぐらいの時間で解決するかもしれないし、少しずつ無理せず、やれることを一緒に楽しみながら、平和につながる活動をやっていきたいと思います。
ロサンゼルス生まれ、鹿児島県育ち。中学卒業後、LAのパフォーミング・アーツ・スクールの名門(LACHSA)にてダンスを専攻。同時期に黒人霊歌の一種ゴスペルを学ぶ。卒業後、日本でソロ・デビュー。2005年『Story』が大ヒット。東日本大震災時に日本の応援歌として広がった『ハピネス』、コロナ禍における人々の絆の大切さを説いた『アルデバラン』など、楽曲には、常に世界平和と人々の融和という一貫したメッセージが込められている。2023年10月から2024年3月まで全国各地を巡る“RESPECT ALL” TOURを実施。この先行き不安な時代を生きる多くの人々に寄り添いながら、勇気と希望を各地に届ける。