culture
テーマ「再生」
新しい一日をむかえるために、「あさになったので まどをあけますよ」というシンプルでやさしいフレーズとともに、子どもたちが窓を開けていきます。
開けた窓から見えるのは、朝のやわらかい光があたる大きな山だったり、ビルが建ち並ぶ都会の街だったり、魚がいる川や広々とした海だったり│さまざまな彩りにあふれた景色。そのひとつひとつが、子どもたちにとって世界でたったひとつの、大切な風景なのだということが感じられます。「きみのまちは はれてるかな?」という問いかけには、まだ会ったことのない遠い国の友だちや、離れた場所に住んでいる大切な人への思いやりが感じられて、やさしい気持ちになります。
刊行されたのは、東日本大震災の年である2011年。「うみは やっぱり そこにいて そらは やっぱり そこにある だからぼくは ここがすき」
朝、窓を開けていつもと同じ風景を眺め、日常を送ることができる。そんな「あたりまえ」に感謝し、大きく深呼吸をして一日をはじめたくなるような絵本です。
最愛の人との別れ。生きている限りそれを避けて通ることはできませんが、子どもにとって人生を大きく変えてしまう出来事です。
アメリカ同時多発テロ事件で大好きな父親を亡くしたオスカー少年はある日、父親のクローゼットで1本の鍵を見つけました。「いったいなんの鍵だろう?」
父親の面影を追い求め、その鍵で開く鍵穴を見つけるため、ニューヨーク中を駆け回って、さまざまな人と出会う日々がはじまります。オスカーは、人より少し繊細で神経質。そんな彼の心が巧みに描かれ、やり場のない怒り・恐怖・孤独・焦りが、観る者にまで流れ込んでくるようです。
10歳の少年は、何百というニューヨーカーと出会い、その人生の一端に触れるうち、誰もが自分と同じように悩み、苦しみ、もがきながら、それぞれの物語を懸命に生きていることに気づきはじめます。そして毎日疲れ果てて家に帰る彼のそばには、息子の成長を祈りながら、そっと見守る母親の深い愛情が——。「自分は一人ぼっちではない」。そう気づくことが、子どもの心を救う魔法の薬になることを教えてくれる作品です。
アカデミー賞作品賞ノミネート作品。
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