culture
テーマ「未知への挑戦」
新型コロナウイルスの蔓延より160年も前に江戸末期の日本をおそったパンデミック。かかれば3日を待たずに死んでしまうことから「三日コロリ」と呼ばれたコレラに敢然と立ち向かい、「江戸の台所」といわれた銚子の町を救ったひとりの医師の物語です。
農家の長男に生まれ、私塾「順天堂」で蘭学を学び、「蘭方医」となった関寛斎。関は、病が流行ると祈祷やまじないをする時代にあって、いぶかしがる人々に天然痘のワクチンである種痘の接種を試み、「コロリ」の流行がささやかれ出すと、手洗いや衣類・食器の煮沸などを推奨する「予防対策八か条」なる札を立て、地域の予防医療を実践していきます。
「ここから先は、いかに感染者を出さないようにするかが肝心だ。……迷信は何の効き目もないことを(民衆に)知らせなくては。いや、それどころか、その迷信こそが感染を広めてしまうことをわからせねばならん」
小学校高学年生でも楽しめるふりがな付きの明快な文章で、民衆の啓蒙に奮闘する医師の視点から、西洋的予防医療黎明期の日本の様子を味わえる1冊です。
英国人のロビンは1950年代、結婚直後に出張した先のケニア、ナイロビでポリオに感染してしまいます。病が進行し自力で呼吸ができなくなった彼に宣告された余命はわずか数カ月――。人工呼吸器がなければ2分で死に至るという現実に、若いロビンは生きる気力を失います。
いったんは絶望したものの、献身的な新妻や生まれたばかりの息子、友人たちに支えられ、生きる希望をとり戻した時から、彼の奇跡の物語はスタートします。当時は「不可能」とされていた自宅での療養生活を開始し、友人らとともに人工呼吸器付き車椅子を開発。それに乗って外出や外国旅行などを次々に実現していきます。そして1994年に64歳で亡くなるまで、障がいがあっても人間らしく豊かに生きられる社会を目指して、世の中のため、車椅子で奔走します。
かつて世界中で流行していたポリオは、ワクチンの開発と普及により、今日では根絶目前となりました。どんな逆境においても希望さえ失わなければ道は開けるということを、ロビンの笑顔が教えてくれます。