世界で働く 日本人職員
©Kazutaka Sekine
今回は、国事務所より広範囲の管轄となる地域事務所で働く日本人職員をご紹介します。
南アジア地域事務所は、ネパールを拠点にアフガニスタン、バングラデシュ、ブータン、インド、モルディブ、ネパール、パキスタン、スリランカの各国事務所をサポートしています。
緊急人道支援が必要な国から、経済発展で1人あたりのGDPが中程度の水準に達した中所得国までを含みますが、新生児死亡の数は世界の35%を占めており、妊産婦死亡や死産の数も高く、サハラ以南のアフリカ同様、女性と子どもの死亡率が高い地域です。
そんな南アジア一帯で、赤ちゃんと母親のための支援を届けるためにまい進する関根の一日をご紹介します。
南アジア地域の8カ国を管轄する地域事務所で、私は各国事務所の母子保健プログラムをサポートしています。地域事務所は直接現地でプログラムを実施することはなく、ユニセフ本部が推進している世界的な妊産婦・新生児保健の政策や戦略が国レベルで実施されるように、南アジア各国の母子保健の状況を分析し、効果的な支援が計画されるように各国事務所のプログラムに対して技術支援や提言を行う、いわば橋渡し的な役割を担っています。
そこで私は妊産婦・新生児死亡と死産の削減を主な目的に、質の高い産前・産後ケア、出産時・新生児ケアが、各国の妊産婦・新生児保健戦略と活動計画に反映されるように、関係者へのアドボカシー活動、パートナーシップの構築、技術的な支援、説明責任を果たし行動を起こすためのデータ構築、知識の創出、地域内での経験の共有をしています。
以前NGO職員として活動していた国で、お世話になった家族の母親と新生児が出産合併症で亡くなってしまうという辛い経験をしました。当時、その家族が住む村で活動していた私は、ある日偶然母親に出会い、産気づく彼女をNGOの車で近くの病院まで搬送する手伝いをしました。
朝から陣痛が来ているものの、なかなか赤ちゃんが生まれて来ず、母親のうめき声が聞こえてくる緊迫した状況でした。本来なら家族がひとり増える幸せな瞬間が、同時に2人の家族を失う大変な悲劇を目の当たりにし、自分の非力さを痛感しました。
私自身、昨年新たな家族が誕生し2児の父親として、産前・産後の大変さを身をもって感じました。妊産婦と新生児死亡の削減という難しい課題に向き合いながら、これからもユニセフ職員として貢献していきたいと考えています。
お腹いっぱい食べられます!
ネパールの代表的な料理といえば、この定食のような「ダルバート」。事務所の近くの食堂で、チキンカレー付きのダルバートを注文しました。おかわりができるお店がほとんどなのでお腹いっぱい食べられます。
※データは主に外務省HP、『世界子供白書2021』による
※地図は参考のために記載したもので、国境の法的地位について何らかの立場を示すものではありません
埼玉県出身。バーミンガム大学で貧困削減修士号、ロンドン大学で公衆衛生修士号と疫学修士号を取得。東京大学大学院で博士号(保健学)を取得。NGO、JICA、ユニセフ、国連人口基金などで母子保健、保健システム強化、感染症対策に取り組む。2012年よりユニセフ。パキスタン、ネパール、シエラレオネ国事務所を経て、2022年5月より現職。