各界で活躍されている方に「子ども時代」を振り返っていただきながら、世界中のすべての子ども、一人ひとりの子どもたちにとって必 要なことは何かを考えていく連載企画「for every child,_」。第25回は、リオ五輪閉会式フラッグ・ハンドオーバー・セレモニーの演出やNHKのSDGs番組『ひろがれ!いろとりどり』発の音楽ユニット「ミドリーズ」の振付など、幅広い分野で活躍する演出振付家のMIKIKOさん。近年は作品や想いを後世に残すことを考えて活動しているという彼女が伝えたいこととは─。個性と調和を大切に演出・振付を続けるMIKIKOさんから勇気がもらえるメッセージです。
両親は共働きでしたが、週末になると、人形劇など観劇の機会を母が率先して用意してくれていました。広告代理店に勤めていた父の仕事の関係で、舞台のバックステージを見せてもらうことも多く、子どもの頃から公演の設定で物語を作って一人で遊ぶのが好きでした。
三姉妹の三女で空気を読まないといけない環境だったので、いつしか周りを観察するのが好きになって「今、人はどう思っているのかな」「あの人のあの瞬間の仕草がとてもチャーミングだな」と、いつも考えていました。そのぶん人とのコミュニケーションの難しさは感じていて、小さい時から自問自答しながら過ごしてきたように思います。今、指導する立場になって、 引っ込み思案な子たちの本音を察知できるのは、そういう子ども時代があったからだと思います。
ダンスを始めたのは高校生の時。流行りに乗って軽い気持ちで始めました。でも続けていくうちにこれが本当に好きなことなのか? と葛藤するようになりました。周りの子たちと比べると踊ることにそこまで心が盛り上がっていないけど、なんとかダンサーとして頑張らなきゃと苦しんでいた時期が長くあります。私に本当に向いているのは「踊っている人を輝かせること」だと、自分自身で認められた時、一気に視界が広がった気がします。じつは子どもの頃から裏方に興味があったし、人の魅力を見つけるのが得意だったので、今振り返るとすべてがつながっています。だから、子どもたちには「ステージに立つ」というような、わかりやすいゴールだけが正解ではないと伝えたいです。人と比べるのではなく、自分にとって本当に心が踊ることや心地いい場所を探せるように、私たちおとなが導いてあげられたらいいなと思います。本当に好きなことなら、まずは自分のためにやっているという意識になり、自分自身の採点が基準になるので、あまり他人からの評価は気にならないんです。だからこそ、私は納得するまでいつまでも自問自答することになってしまいますが、最終的には「中と外の自分」がうまく調和できているなら大丈夫と思えます。
私は振付をする時、みんなの踊りがそろった先に、それぞれの個性が見えるような振りを心がけています。子どもの頃は特に容姿や境遇で周りと比べてしまうこともあると思うけど、本当はこの世に生まれてきてくれただけでもうすでにみんな「はなまる」だよと伝えたいんです。まずは自分を愛して周りの個性も愛して、ありのままの自分を信じながら、どうやって100パーセントの自分を生きていくことができるかを考えてほしいなと思います。
ダンスカンパニーELEVENPLAY主宰。演出振付家として、アート・音楽・テクノロジーの世界で多岐にわたり活躍。アーティストのMV・アニメ・CM・舞台など数多くの作品の振付を手がけ、日本を代表する振付師として知られている。また、テクノロジーと身体表現を融合させる演出家としても国内外で評価が高く、世界30都市以上で作品を上演するなど、精力的に活動している。